概 要

 「科学技術指標」は、我が国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料であり、科学技術活動を「研究開発費」、「研究開発人材」、「高等教育」、「研究開発のアウトプット」、「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類し、約150の指標で我が国の状況を表している。

 「科学技術指標2014」において、変化のあった指標、注目すべき指標を紹介する。

1.研究開発費から見る日本と主要国の状況

(1)日本の総研究開発費は2009年以降、ほぼ横ばいに推移している。

 国の研究開発の規模を示す指標として、主要国の総研究開発費を見ると、日本は2012年度において17兆3,246億円(OECD推計では15.9兆円)であり、2009年以降、ほぼ横ばいに推移している。他国を見ると、米国が他を圧倒している。中国は2009年に日本を上回り、その後も増加し続けている。


【概要図表1】 主要国における研究開発費総額の推移
名目額(OECD購買力平価換算) 

参照:本文図表1-1-1(A)

(2)日本企業が研究開発を重視する姿勢は維持されている。

 日本の総研究開発費の約7割を占める企業の概況に着目すると、日本企業の研究開発費と売上高の対前年増加率は、おおよそ連動した動きを示している。世界経済危機(いわゆるリーマンショック)の影響が日本企業にも及んだ2009年には、研究開発費、売上高の対前年増加率が共に大幅なマイナスとなっていたが、企業の研究開発への注力度を示す指標である売上高当たり研究開発費については、2009年以降も高い値を保っている。全般的に、企業が研究開発を重視する姿勢は維持されていると考えられる。


【概要図表2】日本の企業部門の売上高と研究開発費の対前年増加率及び売上高当たり研究開発費の推移

参照:本文図表1-3-11

(3)日本企業の研究開発のための政府による支援は間接的支援が大きい。

 企業の研究開発のための政府による支援の状況を見るために、「直接的支援」(企業の研究開発費のうち政府が負担した金額)及び「間接的支援」(企業の法人税のうち、研究開発税制優遇措置により控除された税額)を対GDP比で見ると、日本は間接的支援の方が大きい。他国を見ると、直接的支援が大きいのはロシア、スロベニア、米国などであり、間接的支援が大きいのはフランス、カナダ、ベルギーなどである。


【概要図表3】 企業の研究開発のための政府による直接的支援と間接的支援の状況

参照:本文図表1-3-8(A)

2.研究開発人材から見る日本と主要国の状況

(1)日本の研究者数は中国、米国に次ぐ第3位の研究者数の規模を持っている。

 主要国の研究者数を見ると、日本の研究者数は2013年においてFTE値(フルタイム換算値)で66万人、HC値(実数値)は89万人である。FTE値で比較すると、中国、米国に次ぐ第3位の研究者数の規模を持っている。また、日本は2000年代後半から横ばいに推移している。


【概要図表4】 主要国の研究者(FTE)数の推移  

注: FTE:full-time equivalents(研究業務を専従換算した数値)、HC:Head count (実数値)
参照:本文図表2-1-3

(2)日本の女性研究者数の割合は「大学」部門で大きく、「企業」部門で小さい。

 主要国における女性研究者の状況を部門別で見ると、各国とも女性研究者数の割合が小さいのは「企業」部門である。また、「大学」部門では比較的、各国とも割合が大きい。

 日本を見ると、「大学」部門における女性研究者数割合が大きく、25.0%である。他方、一番小さい部門は「企業」部門で8.0%である。また、「非営利団体」部門では、他国と比較すると小さい割合となっている。


【概要図表5】 主要国の各部門における女性研究者数の割合

参照:本文図表2-1-13

3.大学生・大学院生から見る日本の状況

(1)日本の大学における女性入学者数は増加している。

 日本の大学学部、修士課程、博士課程入学者数の状況を見ると、女性の入学者数は増加している。一方、男性の入学者数は減少している。
 日本の大学・大学院の入学者数は、博士課程において2003年から減少が始まり、修士課程においては2010年をピークに減少に転じ、大学学部においては2000年頃から横ばいに推移している。このように、高等教育機関における人材育成は、女性の入学者数が増加することにより、多様性という点で向上しつつあるものの、入学者数全体で見ると規模という点では縮小しつつあり、今後、研究開発人材や高度人材の供給にもその影響が及ぶ可能性がある。


【概要図表6】 学部・修士課程・博士課程別の入学者数
(A)女性入学者
(B)男性入学者

参照:本文図表3-2-6

(2)日本における外国人大学院生の中では中国人大学院生が極めて多い。

 日本と米国における外国人大学院生の状況を見ると、日本における自然科学分野の外国人大学院生は全体で1.6万人(2013年)であり、内訳を見ると中国人大学院生が最も多く、半数の0.8万人を占めている。一方、米国における科学工学分野の外国人大学院生は全体で16.3万人(2012年)であり、内訳を見ると中国人とインド人の大学院生が多く、両国で全体の6割を占めている。


【概要図表7】 日本と米国における外国人大学院生の状況
(A)日本:自然科学分野
(B)米国:科学工学分野

参照:本文図表3-5-1

4.研究開発のアウトプットから見る日本と主要国の状況

(1)論文数シェアで見た日本の存在感は低下しつつある。

 研究開発のアウトプットの一つである論文に着目する。まず、論文数シェアを見ると、日本は、1980年代から2000年代初めまで論文数シェアを伸ばし、英国やドイツを上回り、一時は世界第2位となっていたが、近年はシェアが低下傾向である。しかし、このシェアの低下傾向については、日本のみならず英国、ドイツ、フランスも同様である。
 また、質的指標とされるTop10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアを見ると、日本は、1980年代から2000年代初めにかけて緩やかなシェアの増加が見られたが、その後急激にシェアを低下させている。


【概要図表8】 主要国の論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数シェアの変化
(全分野、分数カウント法、3年移動平均)

参照:本文図表4-1-7


(2)日本の特許数(パテントファミリー数)シェアは2000年代に第1位となった。

 次に特許に着目し、各国・地域から生み出される発明の数を国際比較可能な形で計測したパテントファミリー数を見ると、米国と日本の順位は1990年代後半に入れ替わり、2000年代に日本のシェアが第1位となった。これは、日本から複数国への特許出願が増加したことを反映している。

【概要図表9】 主要国のパテントファミリー数シェアの変化
(全技術分野、整数カウント法、3年移動平均)

参照:本文図表4-2-6(B)

(3)日本の特許数(パテントファミリー数)は電気工学、一般機器、情報通信技術分野でのシェアが高い。

 パテントファミリーにおける日本の技術分野バランスを見ると、電気工学、一般機器、情報通信技術におけるシェアが高く、バイオテクノロジー・医薬品、バイオ・医療機器のシェアが低いというポートフォリオを有している。

【概要図表10】 主要国の技術分野毎のパテントファミリー数シェアの比較
(%、1997-1999年と2007-2009年、整数カウント法)

参照:本文図表4-2-10

5.科学技術とイノベーションから見る日本と主要国の状況

(1)技術貿易収支から見た世界における日本の技術力は高まっている。

 各国の技術力の指標として、技術知識の国際的な取引状況を示す技術貿易について見ると、日本の技術貿易収支比は1993年に1を超えた後、継続して増加傾向にあり、2012年の値は6.1と、高い数値を示している。これは主に技術輸入額の減少によるものであり、なかでも米国からの輸入が減少したことによる。なお、系列会社間の取引を差し引いた技術貿易を見てみると、日本の技術貿易収支比は2012年で2.0であり、2006年以降出超である。一方、米国は4.0である(本文図表5-1-2B参照)。

【概要図表11】 技術貿易収支比の推移

参照:本文図表5-1-1(B)

(2)日本のハイテクノロジー産業の競争力の優位性は低下しているが、ミディアムハイテクノロジー産業の競争力は高い水準を保っている。

 製品やサービスの貿易収支からハイテクノロジー産業の競争力を見ると、2012年の日本の収支比は0.9であり、1を下回り、初めて入超となった。これは主に輸入額の増加によるものであり、なかでも電子機器産業の輸入が増加したことによる。
 一方、ミディアムハイテクノロジー産業の日本の貿易収支比は2013年で3.0であり、主要国中1位である。1990年代中頃に急激な減少を見せた後は漸減傾向にあるが、他国より大きく出超である。


【概要図表12】主要国におけるハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

参照:本文図表5-2-3

【概要図表13】主要国におけるミディアムハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

参照:本文図表5-2-5

注:ハイテクノロジー産業:「医薬品」、「電子機器」、「航空・宇宙」
  ミディアムハイテクノロジー産業:「化学(医薬品を除く)」、「一般機械」、「電気機械(情報通信機器を除く)」、「自動車」、「その他輸送」

(3)日本のプロセス・イノベーション実現企業割合は主要国と比較すると低いが上昇している。

 主要国のイノベーションを実現した企業の割合を、プロダクト及びプロセス・イノベーションについて見ると、日本のプロダクト・イノベーション実現企業の割合は主要国と比較すると低く、減少もしているが、ドイツ、英国、韓国でも減少している。一方、プロセス・イノベーション実現企業の割合については、主要国と比較すると低いが、日本のみ上昇している。
 なお、ここに示した各イノベーション実現企業の割合は、企業の規模を考慮しない企業数ベースの集計結果であり、企業数の多い中小企業の状況がより強くデータに表れていると考えられる。


【概要図表14】 主要国のイノベーションを実現した企業の割合
(A)プロダクト・イノベーションを実現した企業の割合

(B)プロセス・イノベーションを実現した企業の割合

参照:本文図表5-4-2(A)、(B)

科学技術指標の特徴

 科学技術指標は、毎年刊行しており、その時点での最新値を紹介している。原則として毎年データ更新され、時系列の比較あるいは主要国間の比較が可能な項目を収集している。

  • 各国が発表している統計データを使用
     科学技術指標で使われている指標のデータソースは、出来る限り各国が発表している統計データを使用している。また、各国の統計の取り方がどのようになっていて、どのような相違があるかについて、極力明らかにしている。
  • 論文・特許データベースについて当研究所独自の分析の実施
     論文データについては、トムソン・ロイター社“Web of Science”の書誌データを用いて、当研究所で独自の集計をし、分析している。また、集計方法も詳細に記載し、説明している。
    特許関連の指標のうち、パテントファミリーのデータについては、PATSTAT(欧州特許庁の特許データベース)の書誌データを用いて、当研究所で独自の集計をし、分析している。また、集計方法も詳細に記載し、説明している。
  • タイムリーな指標はコラムとして紹介
     ベースとなっている指標の他に、その時々のタイムリーな話題に関した指標、または今後必要と考えられる指標についてはコラムとして紹介している。
  • 国際比較や時系列比較の注意喚起マークの添付
     必要に応じ、グラフに「国際比較注意」「時系列注意」という注意喚起マークを添付してある。各国のデータは基本的にはOECDのマニュアル等に準拠したものであるが、実際にはデータの収集方法、対象範囲等の違いがあり、比較に注意しなければならない場合がある。このような場合、「国際比較注意」マークがついている。また、時系列についても、統計の基準が変わるなどにより、同じ条件で継続してデータが採られておらず、増減傾向などの判断に注意する必要があると考えられる場合には「時系列注意」というマークがついている。なお、具体的な注意点は図表の注記に記述してあるので参照されたい。
  • 統計集(本報告書に掲載したグラフの数値データ)のダウンロード
     本報告書に掲載したグラフの数値データは、以下のURLからダウンロードできる。
      http://data.nistep.go.jp/sti_indicator/2014/RM229_table.html